俺がこの目で実際にみたパレスチナ(4)/ 挑発する入植者と眠れない人々-ハリス村2000年11月

ハリス村発砲現場付近

挑発する入植者達

 食後のお茶をのんでいると、入植者のグループが村の入り口で挑発しているという。カメラだけ持 って、皆に同行。街灯などは全く無く、満月の月明かりと、軍のジープ(あるいは入植者の)が200メ ートルほど向こうから照らすヘッドライトのみ。むこうから何やら怒鳴り声が聞こえ、少年らが鋭い口笛 で応えている。入植者が村に侵入しようと少年達を挑発し、投石が始まったら軍が発砲する、という くり返しらしい。ナワフやネタが、トラメガを使って入植者側に「ここには石を投げたり、武器を持 った者はいない。」と、挑発を止めるよう説得を試みている。

 その間にも村人が次々に出てきて、100人近い男がたたずんでいる。ピエトロと、写真を撮るのは、 灯りでこちらの在りかを見せるようなものだし、この暗がりではフラッシュも届かないから写すのは やめよう、と話をする。いつのまにか、昼間の収穫で仲良くなった少年が横に立っていて、元気か? と聞いてくる。

 突然、2〜3発の銃声。まず当たらないところにいるのだが、皆ちょっとどよめいて逃げる。少年 がcome! と言って手をとってくれる。建設中の家の鉄骨とかで、結構足場が悪いのだ。別の若者も「何 が起こってるかわかるか?立ってたら危ないぞ」と声をかけてくる。僕の後ずさりの動作にくすくす笑 いがもれたりしている。そして、アラビア文字が少し読めると知った少年達が僕の手の甲に、次々と 自分の名前を書いた。 撃ち殺された少年の家で

 投石はなく、一時間強ほどで入植者が引き上げ、対峙は終わった。数日前に射殺された少年の家へ 行く。ナワフの弟が、僕とピエトロが今日会ったばかりだと言うと驚いている。「友人みたいにしゃべ ってるから」と。「パレスチナにはあとどのくらいいる?」「本当は旅を進めたいから急ぎたい。でも もう少し居たい気もするし、毎朝まよってる。」「状況が君をpull(引っ張る) してるんだな」

 殺された少年の家に入る路地の前に、少年とアラファトの写真が小さなネオンに囲まれて掲げてあ る。妹が少年の写真を抱き、回りに女の家族が座っている。腹部を貫通した弾で死んだ14歳のダーゥ ドは、ややぽっちゃりした頑丈そうな少年だ。撃たれた時に尻ポケットに入れていた、皮製財布の貫 通跡が生々しい。Nawafの家へ引き返す途中も、人々はあちこちにかたまって去りがたい様子で話し つづけている。入植者と対峙してる時もだが、「この状況をどう見る?」とよく聞かれる。向こうの丘 に見える給水施設の援助への日本政府への感謝の言葉も。(しかし、今は止まったままで動かせる人 がいないらしい。)

 ピエトロが、ナワフに、「君はたとえばマンデラみたいな、獄中で長く暮らした者の静けさと威厳 があるけど、イスラエルの獄には、どこにどのくらい?」と聞いている。「ほとんど全部だ。ジェニ ンでも、アンサールも、1stインティファーダの前の、1986年から13年だ。」ほんとうに、眼光 の鋭さははんぱじゃないし、物静かな風格がある人だ。

明らかに狙い撃ち

熱血カメラマンのピエトロが、ヘブロンのビデオクルーと一緒に去る朝。朝飯を食べながら、「グロ ーバリゼーションが、新しい奴隷労働をうみだしてるんだ。」と確信に満ちた言葉。僕が京都から来 たというと、「ビートニクの詩人は、五〇年代はインドじゃなくて、京都を目指したんだぞ。」  Nawafをはじめ、皆と抱擁して去る。

 Netaのラジオ出演(電話での)のためNawafの弟アイサの家に移る。久しぶりに少し曇っているが、 風が気持ちいい。Netaがあらためて、「居てくれてうれしいわ」と言う。「昨日、収穫のときに若い男 の子が皆、君と一緒にいるのがうれしくてたまらないみたいだった。」と言うと「あなた(日本人の) も居てくれたから、ああやって行けたのよ。」

アイサの話では4週間前には、向かいの山頂に陣取ったイスラエル軍が庭まで撃ってきたという。 M16では届くはずないから500mmだろう。昨日の兵士や入植者が撃っていたのはM16あるいはブレスト ルだろう。「空に向けてるのか、狙い撃ちなのか?」と聞く。「この村だけで30人が負傷、一人死んだ けど、ほとんどが腰より下をやられてるんだ。完全に狙ってるよ。」「どうして、こんな小さな村が、 こんなにしつこい攻撃を受けるんだ?」「入植地に囲まれてしまったからな。ここ数年で回りは入植 地だらけだ。」 ミサイル攻撃を受けたsalfit村

 昼過ぎのニュースで、皆がすこし興奮している。尋ねるタイミング(ネタの電話の)を見計らって ると、彼女が「元気?」と聞いてきたので、何があったのか聞いてみた。国会で(ある政党が?)入殖 者の引き上げ(撤退)に関する議論を始めようとしている、という事らしい。「これは小さな勝利と 言えるわよ。」

 夕方、アイサが村のオリーブ油しぼり工場へ案内してくれた。疲れ知らずに見えるネタも、さすが に休憩。日が暮れて、ネタを迎えに寄った家の屋上で茶をのんでいると、いきなり当たりが夕方のよ うに明るくなった。ハイウェイからイスラエル軍が照明弾を打ち上げたのだ。びっくりした。ほんと うにくっきりと、オレンジ色に明るくなったのだ。

 ナワフの家で、彼の親類や近所の若者らと衝突場面をくり返しくり返し流すTVを見ながら、僕は 気分的な疲れを感じはじめていた。明日エルサレムにもどって、そろそろヨルダンにもどって….とか 考えていると、「入植者がジャンクションに出てきたわ。そろそろAction time よ」と、ネタの断固と した声。

眠れない人々

攻撃を受けた民家の家族/サルフィット村  夕べと同じ場所の、建設中の家の2階から見ると、車が数台集結しているが、これと言った動きは わからない。外でじっとしているとさすがに寒い。今日は発砲するつもりはなく、ただのデモンスト レーションではないか、とアイサが言う。村人も夕べほどは集まらず、大人2〜30人で様子をうかが うのみ。ナワフが、ややからかう調子で 「今我々が投石を始めたら、一緒に投げるかい?」「いや、 逃げるよ」 結局その晩は、何事もおこらなかった。

 その後、誰かの家に呼ばれてお茶を飲む。と言ってももう夜中の11時なのだ。そんな時間に小さな 子供から年寄りまで、みんなが眠れずに起きているという現実。たった2日目で、僕はくたびれてい るが、ここではこれが日常なのだ。



ミサイルの直撃を受けた部屋/サルフィット村  ハイウェイの向こう側の山に異変があった。Nawafの家の近くから、山の向こうがボッと白く光る のが見えたのだ。夜中の爆撃だ。皆があわただしく携帯をかけまくって、山ふたつ向こうのSalfit 村が攻撃されたとわかる。Nawafが、「明日ラマラ経由でエルサレムに帰るのは、無理になったよ。」

それは、バラクが答える事だよ

  6時半ごろ起こされた。エルサレムへ帰る前に、夕べ爆撃を受けたSalfit 村へネタ、ナワフと一緒 に行く。朝のひんやりした気持ちいい空気の中、登校する子供達は元気いっぱいに見える。しかし、 理由もわからず泣きわめいている女のこや、不安をうちあけるためにネタに話しかけてくる老人が いる。 ここからミサイルが飛びこんだ/サルフィット村

 幹線道路への出口がもうひとつ、巨大ブロックで封鎖されていた。まさに「占領は暴力」 だ。や むなく大回りしてYasuf 村経由の山間の小道を行く。緑の山々が尾根を行く道から見下ろせて、絶 景だ。パレスチナ側チェックポイントは手をあげるだけで通過。Salfit は大きな村だった。ファ タハの事務所と、ごく普通の民家の2ヵ所がやられていた。粉塵が舞う中、かすかに血の匂い。民 家の方は、天井をつきぬけた弾がカーブして壁をぶち抜き、寝ていた人の足を直撃したという。ベ ッドから天井に血が飛び散っている。その人が怪我ですんだのが信じられないほどだ。子供達が顔 をゆがませて、おびえきっている。 ミサイルが飛びこんだ穴を示す村人/サルフィット村

 「どうしてこの家がやられたんだろう?」「それはバラクが答えることだよ」と怒りを押し殺し たナワフ。ネタとナワフが、誰かを村に送ると言う話を、村人と交わしている。

 Haris村に戻ると、フランス人の男女が合流してきていた。彼らと交代するように、僕はエルサレ ムへ戻る。ネタとはあわただしく挨拶を交わし、ナワフとは抱擁して別れた。

「 イスラエル出国〜質問攻め」へ続く

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